彼は、どんな場所をもあらゆることに利用したという。 これからしばらくは、ディオゲネスにお付き合いいただくことになろう。 この男、プラトンと同時代の哲学者で、まあ何と申しますか、破格の人間である。 アレクサンドロス大王も彼のことを欲していたが、大王をして「余がアレクサンドロス でなかったとしたら、ディオゲネスでありたかった」と言わしめた、そんな哲学者である。 清貧を是とし、ボロを身に着け、神殿に転がっていた古い大甕に住み着き、ずだ袋を 担ぎ、杖を付き、ある時は奴隷として売られ(彼はその時「主人を買う者はいないか?」と 自分を宣伝した)、理不尽に殴られるとそれを数倍にして反撃し、それでいてアテネの 市民からは慕われていた、そんな男である。