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2009/05/27 (列伝)19:デカルト「哲学」
哲学については、つぎの二つの事のほか、私は何も語るまい。
哲学が最も卓抜な精神によって幾世紀このかた開発せられて来たにもかかわらず、
未だに一つとしてそこで論争の種とならぬものはなく、したがって疑わしからぬ
もののないことを私は見たから、この学問で他の人人よりもうまくやり遂げたい
と願うほど十分な自信など持てなかったということ、それからまた同じ事柄に関
しては、真なるべき意見はただ一つしかありえないにもかかわらず、いかに多種
多様な意見が学識ある人人によって主張せられうるものであるかを見、真実らし
く思われるにすぎぬような事はすべて、ほとんど虚偽なるものと看做したという
こと。
「方法序説」第一部(岩波文庫p18:落合太郎訳)
もちろんそうだ。
それゆえ哲学は無価値な虚偽である。
だがそれに逆らうことなく同時に、哲学は有意義な真実でもある。
「方法序説」が哲学書であることがその価値を示す、などと言っているのではない。
この「不確かさ」を、個々の人間がまさに「不確かなもの」として納得し体験する
ことが、哲学の大きな価値だ。
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