ある時ディオゲネスは、小さな子が両手で水をすくって飲んでいるのを見て、 「簡素な暮らしぶりでは、私はこの子に負けたよ」 と言って、ずだ袋からコップを取り出して投げ捨てた。 また同じように、小さな子が皿を割ってしまった後でパンのくぼみに豆の スープを入れているのを見ると、彼はお椀も放り出してしまった。 彼がクラネイオンでひなたぼっこをしているとき、アレクサンドロス大王が やって来て「なんなりと望みのものを申してみよ」と言った。すると彼は、 「どうか私を日陰におかないでいただきたい」と答えた。 きましたよ清貧地獄が。 私のような俗人には到底辿り着けない場所だ。 と、即断で可能性を却下してしまうのは、やはり自分の欠点ではあるのだ。