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2006/07/30 (列伝)8:ディオゲネス「教えを説くこと」
ある時、彼が真剣な調子で話をしているのに誰も近付いてこないので、
彼は鼻唄交じりに喋り始めた。すると人々がたくさん集まってきたので、
「くだらぬお喋りには真剣になって聞きにくるのに、真面目な話は軽蔑して
のろのろとやってくる」
と言って、彼はその人たちを咎めた。
恐ろしい男である。
自分で甘い汁を用意しておいて、それを吸いに集まる人間を罵倒。
いったいディオゲネスこの男、どこまで凄まじいのか。
罠にかかった市民も、いい迷惑だと苦々しく思ったに違いない。
あるいは激しく笑ったかもしれないが。
通常、学問や哲学などというものは、こちらが積極的に近付かない限り
触れる機会のないものである。なぜなら、受動的・消極的に触れたところで
何も理解できずに終わることは明らかだからだ。
扉を開ける人だけが、その先に進むことができる。
路上で問答を繰り広げたソクラテスたちも、周囲に集まって聞きにくる
だけの能動性を持った者を相手にしていた。
ところがディオゲネス。
この男はわざわざ愚か者の襟首を掴んで、説教をするのである。
格が違うのである。
我々は、格別な人間に近付く時は、格別の対応をされることを覚悟
しなければならない。
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