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2006/07/13 (列伝)3:ソクラテス「ご馳走と、他人の自分への評価」



金持ちを食事に招いた際、ソクラテスの妻はご馳走を出せないことを恥しがっていた。
それを見て彼はこう言った。
「心配はいらないよ。できた人間ならそんなことを気にはしないだろうし、そうでないなら
 そんな連中のことを我々が気にする必要はないんだから」


こう言われても妻のクサンチッペが納得できたかどうかは怪しい。
おそらく、「ああ、またいつものこの人の屁理屈が飛び出してきた」とかなんとか思った
だけで、やはり恥ずかしさは消せなかったのではないだろうか。

人々は、他人の自分への評価でもって自分の価値を測ろうとする。
低く扱われたくない。
より良く扱われたい。
できることなら現実の自分の価値より高く見られたい。

また別の人たちは、他人が自分をどう評価しようとそれを意に介さず、自分は
価値のある人間だと錯覚している。

そしてソクラテスは、事実価値のある人間であり、そして自分の判断に自信を持って
いるために、評判を気にしないばかりか逆にそれで他人を評価する。

ソクラテスが言っていることは単なるレトリックではない。
自分を評価しない人間とは付き合わないという狭量さでもない。
彼は「自己を高めよ」と言っているのだ。


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