知られたことのない星座 > for Philo-Sophia
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2009/11/06 きっと彼女は世界を救うことができなかっただろう: Post Office
我らがチナスキーもフェイとの間に女の子をもうける。
チナスキーは新生児室のガラス越しに自分の子を眺め、感動して、それをフェイに伝えにいく。
そんなシーンである。
「すみませんが」太ったメキシコ人看護婦が近付いてきた。「そろそろ出ていっていただかないと」
「でもオレは父親だぜ」
「分かっておりますが、奥様を休ませてあげませんと」
オレはフェイの手を握り、彼女の額にキスした。フェイは目をつむり、眠ってしまったように見えた。
彼女はもう若くなかった。きっと彼女は世界を救うことができなかっただろう。しかし彼女はこの
世界をより良いものに変えた。フェイのことを褒めてあげたい。
ブコウスキーのこの感覚が好きなのである。
誰からも心配してもらえないG.G.が、仕事に押し潰されて郵便局から去ってゆくとき、その姿を
見続けたのもチナスキーだけだった。
そういう描写がこの低俗な主人公の物語を凡庸な物語と分かつのである。
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