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2009/11/01 誰もが好きなブコウスキー: Post Office


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誰もが好きなブコウスキーである。

「ポスト・オフィス」は彼の小説の中でもかなり面白いものだが、原文でも読んでおこうと思い立った。
いやしかし、やはり面白い。ブコウスキーは短編も切れ味鋭くて好きだが、長編も独特の面白さがある。
構成美を求めてはいけない。彼の長編はそれ一個の塊で「ぼとっ」と目の前に落ちてくるものだ。

ブコウスキーが革新的でありそして優れているのは、低俗で陋劣な負け犬を主人公に据え、下品な物語を
展開しつつもその主人公に最上の価値を拾わせるところだ。
実際、最低の人間でさえ救われ得るのであれば、希望を持ち得ない人なんて有り得るだろうか?


それはそれとして Post Office はおもろい。

大雨の中トラックで郵便配達をする主人公。川のようになった目の前の道を突っ切れば仕事は一段落に
できるのであるが、それは無謀なことだ。が、もちろん主人公チナスキーはその道に突き進み、トラックは
あえなく停止してしまう。
トラックは諦め、泳ぐようにして彷徨っていると仲間が同じ目にあっている。
「オレの車は12年もののポンコツだがお前の車は新しい、もう一度挑戦しようぜ」と二人でその仲間の
車に辿り着くが、エンジンは音一つ立てない。
"No good. It's dead."
そこで、望みもなく自分のトラックのエンジンをかけてみると、これがかかる。
It started up. I really let it roar. VICTORY!
ビクトリーだよビクトリー。人生いたるところビクトリー在り。


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