アレクサンドロス大王があるときディオゲネスの前に立って、 「余は、大王のアレクサンドロスだ」 と名乗ると、 「そして俺は、犬のディオゲネスだ」 と彼は応じた。 「犬!」と嘲りを受けるだけでなく、ディオゲネスは自称犬でもあった。 大王(まぎれもなく本物の大王)の前で、俺は犬だと応じる平衡感覚は、 白昼ランプで人間を探す感覚と等しい。 彼が探しているのは人間であり、人間という貴い存在の前には、不完全な 精神など犬でしかないのだ。